出産が終わった女性は身体に大きなダメージを負っています。
しかし、生まれたばかりの赤ちゃんには昼も夜もなくお世話の必要があるので、ゆっくりと休む暇はありません。
特に新生児期から1、2ヶ月は授乳回数も多いのでほとんどのママが睡眠不足に悩まされます。
それに加えて出産後のママはホルモンバランスの崩れが原因のメンタルの不調にもなりやすい状態になっています。
理由なく悲しくなったり、イライラしたり、落ち込んだりといった症状が出やすいのです。
これは「マタニティブルー」や「産後うつ」と呼ばれています。
ただし、「マタニティブルー」や「産後うつ」はどちらも産後のママによく見られるメンタルの不調ですが、同じものではありません。
症状はどちらも似ているので混同してしまいがちですが、「マタニティブルー」は一過性で時間が経過すれば自然と解消しますが、「産後うつ」は病気であり、自然に解消しずらいのです。
今回は産後のママの情緒障害、「マタニティブルー」と「産後うつ」の症状や予防法などについて考えていきたいと思います。
マタニティブルーとは
マタニティブルーは出産後の女性の50%以上に見られる一過性の情緒障害のことで、出産後の2日から7日くらいの間にに症状がでて、10日から2週間ほどすると自然に解消します。
マタニティブルーは、出産による急激なホルモンの変化によって起こると考えられています。
出産後すぐに情緒の不安定な状態になり、気分の落ち込みや不安感、イライラ、悲しみといった症状がでますが、2週間以内に自然と心のバランスが戻るので心配はいりません。
産後うつとは
産後うつは出産後の女性の約10%にみられる症状で、マタニティブルーの期間が終わった後に現れる情緒不安定な状態です。
産後うつの原因には産後のホルモンの影響や慢性的な睡眠不足からくる疲労、急激な生活とリズムの変化などが考えられ、マタニティブルーがきっかけになることもあります。
マタニティブルーは一過性の情緒障害ですが、産後うつは一過性ではないので適切に対処せずに放置してしまうと重症化してしまうことがあるので注意が必要です。
産後うつが重症化してしまうと、最悪の場合には自殺や虐待といったことにつながってしまうこともあるので注意しなければいけません。
産後うつの症状としては、気分の落ち込み、気持ちの浮き沈みが激しくなる、過食、食欲不振、疲労感、イライラ、無気力、自信喪失、不安感といったものがあります。
産後うつを予防するには
産後うつは出産後のホルモンバランスの崩れ、身体のダメージと慢性的な睡眠不足からくる疲労、生活そのものの変化や生活リズムの変化などが原因になります。
これらの原因の多くは避けられませんが、できるだけママの身体と心の負担を軽くするための工夫をすることはできます。
少しでも身体と心の負担を軽くすることができれば、産後うつになる可能性を減らすことができます。
次に産後のママの心と身体の負担を軽くするためのいくつかの方法をご紹介します。
1出産前から準備する
赤ちゃんが生まれると今までの生活が一変します。
昼夜を問わない授乳やおむつ替え、夜泣きへの対応など
産後の体のダメージを残したまま、寝不足になり疲労が蓄積していきます。
それを防ぐためには家事や育児の一部を家族や家事代行サービスなどにやってもらいましょう。
しかし、出産後はあまりに忙しくて家事代行サービスを手配することもできないかもしれません。
できるだけ時間のある出産前に家族へのお願いや家事代行サービスへの申し込みなどをしておくようにしましょう。
2完璧は目指さない
育児が育児書に書かれている通りに進んでいかないと悩んだり、焦ったり、自分を責めたりしてしまうことがあります。
特に真面目な性格のママほどそうなりやすい傾向があります。
しかし、育児は育児書に書かれている通りに進むことはあまり多くありません。
完璧な育児を目指してしまうと自分を追い詰めてしまう原因にもなってしまいます。
「こうしたい」「こうなってほしい」という思いはもちろん大切ですが、たとえそうならなくても「まあ、いいか!」という気持ちでいることも大切です。
育児に関してほどほどにするのは難しいかもしれませんが、育児に直接関わりのない家事などは多少手を抜くなどしてすべてに完璧を目指したりはしないようにしましょう。
3家事は変わりにしてもらう
出産直後から1ヶ月は育児以外の家事は自分でやらないようにしましょう。
特に里帰り出産ではない場合に一番頼りにしたいのは夫ですが、もしも仕事で忙しく、なかなか頼めないようであれば、実家のお母さんや家事代行サービスなどに家事をお願いしましょう。
家事代行サービスには「家事全般」、「ネットスーパー」の利用、「食事の宅配サービス」など様々なサービスがあるので事前に調べて準備しておきましょう。
家事は誰かにしてもらって、少しでも睡眠をとって身体の回復に努めましょう。
4 時には自分の時間を作る
慣れない育児に突入していくと、わからないことだらけで気がつけば自分の時間は忙殺されてしまっていることが多々あります。
産後1ヶ月はなかなか自分の時間を取ることなどは難しいかもしれませんが、1ヶ月を過ぎたら、あえて意識的に自分の時間を作りましょう。
夫が休日の時などに1〜3時間ほど育児を頼んで美容室や買い物に出てみたり、友人と会ってみたりして積極的に気分をリフレッシュしましょう。
5ささいなことでも相談する
特に初めての育児には不安や疑問がいっぱいです。
そんな時は自治体の保健センターや保健相談所、子育て支援包括センター、助産師さんなどに相談に乗ってもらいましょう。
具体的な解決策やアドバイスがもらえますし、悩みを聞いてもらうだけでも気持ちが軽くなることがあります。
産後うつかもしれないと感じたら
もしも自分が産後うつになりかけているのではないかと感じたら早めに対処することが重要です。
1エジンバラ産後うつ病問診票(EPDS)でチェックしてみる
英国で開発された産後うつのチェックのための問診票でEPDSと呼ばれることもあります。
エジンバラ産後うつ病問診票(EPDS)は様々なサイトで公開されているので、自分でチェックしてみるといいかもしれません。
2子育て世代包括支援センターを活用する
自分が産後うつになっているかもしれないと感じたら、かかりつけ医などに相談するのがいいのですが、もし、かかりつけの医師や専門医などがよく分からない場合には地域の保健相談室や保健相談センター、子育て世代包括支援センターなどで相談に乗ってもらいましょう。
3産後健診費用の助成制度を活用する
2017年から出産後の母親の健診が国と自治体の助成で受けることができるようになっています。
従来からある1ヶ月健診はあくまで子供の発育状態などを確認するのが主な役割ですが、産後健診はママの身体と心の状態をチェックするのが目的です。
産後健診の助成では、産後2週間と1ヶ月の2回分の健診費用をそれぞれ5,000円まで助成してもらえます。
健診費用はほとんどの施設で1回5,000円で受けられることから、多くの施設でほぼ無料で検査を受けることができます。
この制度を活用することでママのメンタルの不調も早めに発見してケアすることができます。
産後健診費用の助成について詳しくは、自分の住んでいる自治体のHPで確認しましょう。
まとめ
女性は出産によってホルモンのバランスが大きく変わるために、心のバランスも崩しやすい状態になります。
この時に起きる情緒不安定な状態を「マタニティブルー」と呼びます。
「マタニティブルー」は出産した女性の半数以上が経験しますが、一時的なものなので、産後2週間以内に自然と解消します。
それに対して「産後うつ」はマタニティブルーの期間が過ぎた後に現れる情緒不安定な状態で、適切な対処をしない限り自然に治ることはなく、まれに重症化してしまうことがあります。
「産後うつ」が重症化すると最悪の場合、自殺や虐待などにつながる可能性もあるので早めに対処をすることが必要です。
「産後うつ」はマタニティブルーをきっかけとして発症することもあるので、出産直後からしっかりと予防することが大切です。
しかし、それでも産後うつになってしまった場合には、早めにかかりつけの医師や専門家などに相談することが大切です。
産後のママの身体と心のケアを目的とした「子育て世代包括支援センター」での相談や「産後健診費用の助成」などの制度を活用して産後の心の不調に早め早めに対処していきましょう。